アマゾン現役社員の池乃堀正太郎、かく語りき

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エージェンシー理論を論文で読んでみよう(続き②)

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前回に引き続き、エージェンシー理論について触れていきます。前回の記事はこちらです。

今回は2つ目のProposition(命題)についてです。使っている論文はこちらのものです*1

Proposition 2: When the principal has information to verify agent behavior, the agent is more likely to behave in the interests of the principal.

命題2は、プリンシパル(上司)がエージェント(部下)を評価できる情報を持っている時、エージェント(部下)はプリンシパル(上司)に同調した態度を取る、となります。

この命題はエージェンシー問題がなぜ発生するのかを考えると簡単に導けるものだと思います。そもそも部下が責任の欠如(エージェンシー問題)に陥ってしまうのは情報の非対称性が発生するからです。上司が見ていないのでOpportunism(御都合主義)に陥りやすいんです。バイトの店員であれば店長が見ていなければサボりますよね。その理屈と全く同じです。

この命題は他の実証研究に基づいて示唆されているものです。具体的には下図にあるように、「資本・労働市場からのモニタリング効果が経営者の機会主義的行動の抑制につながる」という研究*2や、「取締役会のモニタリング効果が経営者の機会主義的行動の抑制につながる」といった研究*3です。

最近目にしたニュースで、社外取締役の設置義務を定めた改正会社法の施行が2021年3月1日となる政令が閣議決定された、とありましたが*4、これは命題2で言っている懸念に対する打ち手だと考えていいと思います。取締役会の透明性がなければ、経営者が暴走しても止めることができないためです。逆に透明性があれば経営者は株主に同調した動きを取らざるを得なくなります。取締役の報酬などを開示するのもこの透明性を維持するためです。

このように会議の透明性がプリンシパルとエージェントの情報の非対称性を回避、エージェントの機会主義的行動を抑制することでエージェント問題を回避しているのです。

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*1:K. Eisenhardt, "Agency Theory: An Assessment and Review," Academy of Management Review, 1989.

*2:Fama, E. (1980) Agency problems and the theory of the firm. Journal of Political Economy

*3:Fama, E., & Jensen, M. (1983) Separation of ownership and control. Journal of Law and Economics

*4:https://this.kiji.is/701216252844180577?c=113147194022725109