アマゾン現役社員の池乃堀正太郎、かく語りき

キャリア磨きに力を入れたい人へのアドバイスです。

エージェンシー理論を論文で読んでみよう(続き①)

f:id:ikenobori:20201116224150j:plain

今回は前回の続きとなります。少し日が開いたのですがもし前回の記事をご覧になっていない方はこちらをぜひ参考にして頂きたいと思います。

前回までの記事を簡単に述べると、エージェンシー理論で覚えておくべき点は以下の通りとなります。

  • 組織には、上司と部下にはそもそも倫理や責任の欠如(理論ではモラルハザードと呼びます)が発生する*1
  • 特に、その問題は、上司が部下の仕事が見えない状態の時や、仕事の成果に不確実性が伴う時に発生しやすい
  • モラルハザードの問題が発生した時にどのような契約を上司と部下の間で結べばいいのか、を扱うのがエージェンシー理論で明確にしている一つの結論
  • 契約は大きく2つあり、1つは成果型契約(成果に応じて報酬を支払うもの)、もう1つはプロセス型契約(仕事の進め方そのものに応じて報酬を支払うもの)

早速論文で取り上げている1つ目のProposition(命題)について触れていきたいと思います。この記事で扱う論文は前回も紹介したものと同じです*2

Proposition 1: When the contract between the principal and agent is outcome based, the agent is more likely to behave in the interests of the principal.

プリンシパルが上司、エージェントが部下と読み替えることができますので、上記の英訳は、上司と部下間の契約が成果型契約である場合、部下は上司に同調した態度を取る、となります。

これはどういうことかというと、成果型の契約にすると部下が成果を達成しないと報酬を得ることができないので上司の思惑通りに部下をコントロールできる、という風に解釈することができます。部下がOpportunism(御都合主義)に陥ることを防ぐことができるので、エージェンシー問題が発生しないということです。

これは論文では、株主と社員の間に発生するエージェンシー問題から示唆を得ています。株主(プリンシパル)と経営者(エージェント)はエージェンシー問題が発生しやすいが、経営者が株を所有すると(いわゆるストックオプションなどで報酬の一部を株としてもらう)、株主と経営者のゴールが一致するので共に同調した動きを取りやすいという実証研究が多く残されているからです。例えば以下のような論文です*3

考えてみると、経営者だけでなく、最近は(アマゾン含めてですが)ストックオプションを報酬の一部として社員に支払っている会社が多くあります。社員持株会も同じです。

いずれも会社がその全部、もしくは一部のコストを負担してまで経営者や社員に株をシェアしているのです。これはなぜかというと、一言で言えばエージェンシー問題を解決したいからです。株主と経営者とそして社員が同じ方向に向かっていくためにストックオプションが用いられるのはこのような背景があるということです。

f:id:ikenobori:20201116223515p:plain

*1:上司のリーダーシップや部下のモチベーションとは直接関係なくてもエージェンシー問題は発生します

*2:K. Eisenhardt, "Agency Theory: An Assessment and Review," Academy of Management Review, 1989.

*3:Jensen, M., & Meckling, W. (1976) Theory of the firm: Managerial behavior, agency costs, and ownership structure. Journal of Financial Economics, 3, 305-360.