アマゾン現役社員の池乃堀正太郎、かく語りき

キャリア磨きに力を入れたい人へのアドバイスです。

歴史あるリーダーシップの研究(その5)

今日は5つ目のリーダーシップスタイルの紹介となります。ちなみに前回はTransformational Leadershipについて説明しました。

今回はEmpowering Leadershipについて触れます。Enpoweringとは部下に権限を移譲したリーダーシップのことです。セルフリーダーシップ、フォロアーシップ、シェアードリーダーシップなどのスタイルに近いものです。Enpowering Leadershipが成り立つ考えは、心理学などの理論で説明ができます。

例えば、Self-management(自己管理)という概念が臨床心理学で提唱され*1、これが組織に適用されたと言われています。Self-managementはいわゆる上司が発揮するリーダーシップの代替として存在することが証明されています*2

またSocial Cognitive Theory、いわゆる社会的認知理論により、個人が自分の行動を通じて環境にどのような影響を与えるかということが議論されるようになりましたが、リーダーシップの世界でもこの理論を使って、あるべきセルフリーダーシップの行動がモデル化されるようになったようです*3

さらには上司と部下がとも目標をセッティングすること、つまり参加型の目標を設定したほうが高い業績と組織の満足度に寄与されるといった、Participative Goal-setting Researchというものが盛んにおこなわれましたが*4、ここでもセルフリーダーシップの有効性が証明されています。

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もうここまで来るとリーダーシップとは上司が発揮するものではないことがお分かりいただけると思います。会社のただの一社員であったとしても、顧客のために、そして社会のために参加型で目標を設定し、その目標達成に向け力を注ぐ事こそがリーダーシップそのものというわけです。

ここで改めてリーダーシップの定義を見てみましょう。やっぱり肩書や役職のことは一切触れられていないですよね。

Leadership is an interaction between two or more members of a group that often involves structuring or restructuring of the situation and the perceptions and expectations of the members. Leaders are agents of change - persons whose acts affect other people more than other people’ s acts affect them. Leadership occurs when one group member modifies the motivation or competencies of others in the group. (Bass, 1990, p. 19-20.) *5

最後にEnpowering Leadershipについてまとめると、Encouraging independent action(自主的なアクションの奨励)や、Encouraging self-development(セルフマネジメントの奨励)をすることによって、Participative goal setting(参加型目標設定)に積極的に関わっていくことです。Enpower Leadershipには、Opportunity thinking(機会志向)や、Self-reward(自己報酬)を自らで設定していくことが奨励されます。

以上これまで5つのリーダーシップスタイルを見てきました。どのリーダーシップが良い悪いということを理解するよりも、そのようなリーダーシップがどういった状況で成り立つのか(It works well because....)を理解することが重要だと思います。それを理解するために、英語に自信ある人は今回紹介した論文などをGoogleなどで拾ってきてぜひ読んでみることをおススメします*6

リーダーシップに正解はありません。ただ断言できるのはリーダーシップは人の心理に寄り添うものだということです。何がその人の心を動かしモチベートさせるのかを考える、これにより理想のリーダーシップが必ず見つかると思います。

*1:Mahoney, M. J., & Arnkoff, D. B. (1978). Cognitive and self control therapies. In S. L. Garfield & A. E. Borgin (Eds.), Handbook of psychotherapy and therapy change (pp. 689722). New York: Wiley.

*2:Manz, C. C., & Sims, H. P., Jr. (1980). Self-management as a substitute for leadership: A social learning theory perspective. Academy of Management Review, 5, 361-367.

*3:Bandura, A. (1986). Social foundations of thought and action: A social cognitive theory. Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.

*4:Erez, M., & Arad, R. (1986). Participative goalsetting: Social, motivational, and cognitive factors. Journal of Applied Psychology, 71, 591-597.

*5:入山 章栄. 世界標準の経営理論 (Kindle の位置No.5963-5966). ダイヤモンド社. Kindle 版.

*6:例えば、Pearce, C. L., & Sims, H. P., Jr. (2002). Vertical versus shared leadership as predictors of the effectiveness of change management teams: An examination of aversive, directive, transactional, transformational, and empowering leader behaviors. Group Dynamics: Theory, Research, and Practice, 6(2), 172–197. タイトルをコピペしてGoogleで検索かければこの論文が見つかります